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令和8年度施政方針
施政方針
(令和8年3月3日)
本日ここに、令和8年3月定例会を招集し、令和8年度当初予算案をはじめとする諸議案の御審議をお願いするに当たりまして、私の町政運営に臨む所信の一端と重点施策の概要について御説明申し上げ、町民の皆様並びに議員の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
私は、町長就任以来、「持続可能なまちづくり」を一貫して掲げ、町政運営の指針である「北栄町まちづくりビジョン」の実現に全力を注いでまいりました。
昨年10月、本町は町制施行20周年という輝かしい大きな節目を迎えました。旧大栄町と旧北条町が合併し、新たな歩みを始めてから20年。私たちはこの間、激動する社会情勢や未曾有の感染症、激甚化する自然災害といった幾多の困難に直面してまいりましたが、その都度、町民の皆様の知恵と勇気、そして郷土を愛する強い心によって、一歩一歩着実に乗り越えてくることができました。
しかし、避けては通れない厳しい現実もあります。本町の人口は、この20年の間に約3千人、率にして約18パーセント減少いたしました。この構造的な人口減少は、地域経済の担い手不足や、コミュニティの維持、そして生活基盤の確保といった、私たちの暮らしの根幹を揺るがす課題を突きつけています。
人口減少下にあっても、この北栄町が持続可能なまちとして発展し続けるためには、今、私たちが未来を見据えた決断を下し、必要な生活機能を持続的に確保できる強靭な仕組みを構築しなければなりません。
幸いにも、昨年4月の道の駅ほうじょうのオープン、来年春の北条ジャンクションの共用開始、青山剛昌ふるさと館のオープンなど、北栄町は活気ある変化の時期を迎えています。また、内外から北栄町を元気にしたいという若者や人材、企業が集まるようになり、イベントや事業所への参画などを通じた賑わいづくりの一役を担っています。
一方で、混迷する国際情勢や人手不足、円安の進行による物価高が町民のくらしや産業を直撃しています。また、1月の島根県東部を震源とする地震の発生や2月の大雪、各地で相次ぐ火災、地球温暖化に端を発する夏の高温など、町民を取り巻く環境は厳しさを増しており、これに立ち向かい、町民を守ることが大きな課題となっています。
令和8年度、それは、これまでの「礎(いしずえ)」を築く段階から、積み上げてきた施策が町民の暮らしの中で具体的な「形」となる、いわば「結実」にむけ一歩を踏み出す年です。
私は、本年度の町政運営のテーマを「住みたくなるまち、住み続けたくなるまち 北栄町 ~3つの『育む』で創る、確かな未来~」と定めました。
本町は、かつてない変化の好機を迎えています。このチャンスを逃さず、変化を力に変え、攻めるべきは攻め、守るべきは守る。北栄町の「次の20年」への躍進を確かなものにするため、全力を尽くす所存です。
【令和8年度 施政方針の柱】
令和8年度の予算編成及び施策の展開に当たりましては、3つの「育む」という柱と、まちづくりビジョンをもとに、6つの目標を具体化していきます。
第1は、「暮らしの安心」を育むことです。
長引く物価高騰と、予測困難な自然災害。町民の皆様が日々の生活に不安を抱くことのないよう、行政がしっかりと寄り添い、直接的な生活支援とまちの強靭化を同時に進めます。
水道基本料金の半年間の減免や、給食費の抜本的な負担軽減、そして住宅の耐震化支援の大幅拡充、避難所となる学校体育館への空調施設整備など、将来の不安を安心に変えるための「守りの投資」を優先的に実施します。
また、医療施設や栄地区における商店の誘致についても、実現に向け、動きを進めていきます。
第2は、「地域の誇りと活力」を育むことです。
若者や女性から「選ばれるまち」になるためには、この町で暮らし、働くことへの誇りと活力が不可欠です。
Uターンを希望する若者への乗用車購入支援という踏み込んだ施策を新たに導入するほか、将来にわたり産地を維持発展させるため、農作業の身体的な負担を軽減するスマート化や設備導入を進めていきます。
青山剛昌ふるさと館のリニューアルを機にした宿泊施設の誘致や事業者の新商品開発、観光ルート化、そして起業支援を戦略的に展開し、地域経済を「稼ぐ力」で満たしていきます。
第3は、「次世代への責任」を育むことです。
私たちが享受しているこの豊かな環境と、温かなコミュニティを次世代に引き継ぐことは、私たちの責務です。
保護者の負担軽減や孤立する子育てを防止するための「おむつ給付プロジェクト」や育ちの不安によりそう「こども家庭センター」の設置により、責任ある子育て環境を確立するとともに、「脱炭素先行地域」としてエネルギーの地産地消を推進し、持続可能な未来への道筋を確かなものにします。
また、人口減少においても地域の活力を維持するため「移住定住」「二地域居住」を推進し、全国から北栄町を共に支える人材の迎え入れを進めていきます
以上、取組の柱について申し上げました。それでは、第2次北栄町まちづくりビジョンの部門別計画に沿って、具体的な取組を御説明申し上げます。
1.地域資源で稼ぎ賑わうまちづくり
まず、「地域資源で稼ぎ賑わうまちづくり」について申し上げます。
本町の基幹産業である農業は、高齢化と担い手不足、さらには生産資材の高騰という三重苦に直面しています。しかし、農業は単なる産業ではなく、本町の美しい景観と町民の誇りを支える基幹です。
新規就農者の確保に向けた相談会の開催や、初期投資費用への支援をさらに拡充します。特に、農家が直面する過酷な労働を軽減し、生産性を向上させる「スマート農業」や園芸施設整備、機械導入を積極的に支援していきます。
「ともに目指す!担い手支援事業」や「集落営農体制強化支援事業」を通じ、大栄西瓜やねばりっこ、らっきょう、そして北条ブドウといった本町自慢の農産物の産地活性化を強力に推進します。地域おこし協力隊制度を活用し、生産組織そのものを支える人材を確保するなど、現場の「人手不足」に対して、現場の声に即したアプローチを展開していきます。
また、砂丘地の防砂林を松くい虫被害から守るため、徹底した防除・伐倒駆除を継続し、関係者と連携して砂丘地農業の基盤を死守していきます。
商工業の振興については、山陰道北条道路の部分開通や北条湯原道路の整備という歴史的機運を、地域経済の起爆剤へと変えていきます。
企業誘致と新規創業支援を強力に展開し、新たな雇用を生み出すとともに、宿泊施設の誘致については、アドバイザーや民間企業の知見を活かし、官民連携による誘致及び立地支援を進めていきます。
町と商工会がタッグを組む「地域の人事部」プロジェクトを深化させ、都市部の複業人材や専門人材のノウハウを町内企業の課題解決につなげるとともに、良質な雇用の拡大により、地域内経済の好循環の実現を図っていきます。
観光の振興については、いよいよ「青山剛昌ふるさと館」の新築移転プロジェクトが開館まで1年を切る段階へと入ります。令和9年春のグランドオープンに向け、本体工事に加え、周辺整備を計画的に進めます。
全町を挙げて祝賀ムードを高めるため、横断幕やカウントダウン看板を設置するほか、観光アンバサダー等の外部人材を活用し、国内外へ向けた戦略的な情報発信を加速させます。
施設を建てることだけが目的ではありません。観光の活力を町全体の「豊かさ」へと還元するための観光商材の開発や、観光客の町内周遊に向けた新たなカラーオブジェの整備や電動モビリティの導入に向けた実証実験などを通じ、地域の豊かさと調和する観光地づくりを推進していきます。
2.生涯学び未来を育てるまちづくり
未来をつくる教育の推進については、教育大綱の基本目標に基づき、「次世代への責任」を果たすための取り組みを重点的に行います。
学校環境の充実として、近年の酷暑への対応と、災害時の避難所機能の向上を目的とし、小中学校の体育館等への空調整備を強力に推進します。また、建設から60年が経過した大栄中学校については、校舎の耐力度調査を実施し、改修や将来の活用方針について、安全性を最優先にしつつ検討していきます。
誰一人取り残さない教育のため、スクールソーシャルワーカーの配置や「校内教育支援センター」の体制を維持し、不登校傾向にある子どもたちやフリースクール利用者への支援を継続します。
学校給食費については、食材高騰という厳しい状況にありますが、国の新たな支援制度等を活用し、地産地消の質を落とすことなく、小学校の保護者負担を大幅に軽減します。中学校においても町が増額分を負担し、子育て世帯の経済的負担の緩和を図ります。
生涯学習活動の推進については、中央公民館大栄分館の建替えを本格化させます。令和8年4月からはいよいよ建築工事に着手し、多世代が交流し、新たな学びと発見が生まれる「未来につながる拠点」としての姿を具体化していきます。
図書館においては、大栄分館との連携を見据えつつ、幅広い世代が集い、何度でも訪れたくなるような魅力ある場所づくりを追求します。
文化・芸術の振興については、「文化の薫るまち北栄町」として、前田寛治生誕130年を記念した特別展の開催など、郷土の偉人に触れる機会を創出します。
スポーツの振興においては、体育施設への「スマートロック」導入により、町民の利便性向上と避難所機能の効率化を図ります。
子育て支援の充実については、本町の未来を左右する最重要施策として位置づけます。
令和8年4月、保健師と社会福祉士が一体となって相談に応じる「こども家庭センターおひさま」を開設し、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援体制を確立します。また、地域におけるこども施策を総合的に推進するため、「こども計画」の策定に取り組みます。
新たに実施する「おむつ給付プロジェクト」は、二つの形態でスタートします。
一つは、0歳から2歳の未入園児へ、対面での面談を通じた提供です。単なる経済的支援に止まることなく、おむつを手渡す機会を通じて、孤立しがちな家庭の不安や困りごとに気づき、行政が手を差し伸べる「見守り」の重要な接点となります。
もう一つは、園に入園している子どもたちへ、園で使用するおむつ・おしりふきの給付です。保護者の毎日の準備の負担を軽減すると同時に、保育士の事務負担も削減し、保育の質の向上へと繋げます。
これらに加え、「こども誰でも通園制度」の3園での実施や、北条こども園の調理業務の民間委託により、安全で柔軟な、子育て世帯に「選ばれる」保育環境を確立します。
鳥取中央育英高校の存続については、地域ぐるみで魅力化を推進し、若者が夢を語り、成長できる機会を創出することで、入学者の増加に繋げていきます。
3.誰一人取り残さないまちづくり
人権教育の推進については、「個性を認め合い、互いの心に寄り添う町」の実現を目指し関係機関と連携した取り組みを進めていきます。体験を通じた人権学習を推進し、子どもたちが人権尊重の視点を持ちながら、郷土への誇りを育む取組を実施します。
福祉の充実については、第2期北栄町地域福祉推進計画に基づき、誰もが住み慣れた地域で最期まで安心して暮らし続けられる「地域共生社会」の取り組みを進めていきます。重層的支援体制をさらに前進させ、引きこもりなど、既存の窓口では届きにくい複雑な課題に対しても、包括的かつ温かな支援を届けていきます。
高齢者福祉では、介護予防や認知症施策、高齢者福祉サービスの提供に取組みます。障がい者福祉では、サービスの提供体制確保に万全を期していきます。
健康づくりの推進については、第3次健康ほくえい計画の中間見直しを行い、住民アンケートの結果を反映させた重点項目を再設定し、健康寿命の延伸に向けた取り組みを進めていきます。がんの早期発見のため、精密検査の受診勧奨を個別訪問等により徹底します。
新たな取組として「プレコンセプションケア事業」を開始します。若い世代が、正しい医学的知識に基づき、将来の妊娠や出産を含めた健康管理について考える機会を提供し、健診費用を助成することで、人生の長期的な健康維持を支援します。
また、感染症対策として、RSウイルス予防接種の導入や帯状疱疹ワクチンの助成など、命を守る取組を強化します。
医療体制の確保については、懸案である由良地区の診療所開設に向け、県の支援制度を最大限に活用し、医師会等と連携し、誘致活動を継続します。
4.安全で持続可能なまちづくり
環境施策については、「脱炭素先行地域」としての取組をいよいよ本格化させます。
東大山グリーンエネルギー地域振興公社を形成する倉吉市、琴浦町や鳥取みらい電力等と密接に連携し、営農型太陽光発電の推進や、公共施設への再生可能エネルギー導入を加速させます。エネルギーの地産地消によって地域経済を循環させていきます。
ごみの分別については、重大な発火事故を未然に防ぐため、令和8年度より「充電池」を「有害ごみ」として新たに回収を開始します。
適切な処理体制を構築し、安全で快適な生活環境を維持していきます。
北条砂丘風力発電所については、町営事業の廃止後、民間への譲渡を円滑に進め、譲渡後も適切な維持管理が行われるよう技術面のサポートを実施するとともに関係法令に基づき、必要な指導や監視を行い、地域の安全・安心の確保に努めます。
インフラ整備については、老朽化対策と災害に強いまちづくりを両立させます。
特に能登半島地震等の教訓を重く受け止め、「住宅の安全確保」を最優先事項に掲げます。木造住宅の耐震化補助を大幅に拡充し、耐震改修や建て替えの動きを強力に加速させていきます。
また、大分市での大規模火災において管理されていない空き家などが延焼拡大の要因となったことを踏まえ、由良地区において今後の活用を踏まえた空き家調査を実施します。これは守るだけの消極的な防災から、まちづくりによる地域の活性化と防災機能に繋げる新たな動きです。
道路整備については、山陰道北条道路の令和8年度中の部分開通を見据え、周辺道路の整備や通学路の安全確保を計画的に進めます。
また、未整備区間の早期完成に向け、国・県への要望を継続します。
上水道事業については、物価高騰から家計を守るため、「夏時期を中心に水道基本料金の半年間減免」を実施し、町民生活を直接支えます。下水道事業については、将来を見据えた広域化・共同化の検討を深めるとともに、接続にかかる受益者分担金については、整備が終了したことから廃止します。
安全なまちづくりの推進については、由良川水系の洪水想定の見直しを反映したハザードマップを新たに作成し、全戸配布します。災害リスクを「わがこと」として正しく理解し、適切な避難行動に繋げていただくための普及啓発に努めます。
令和8年10月。鳥取中部地震から10年の節目に開催される「ぼうさいこくたい」を、町の防災力向上の好機と捉え、関係機関と連携した訓練を実施するなど、町全体の意識醸成を図ります。
地域の公共交通については、タクシー利用料助成や買物支援を継続するとともに、住民有志による助け合いの移動手段を支援し、持続可能なものとして普及を図っていきます。
5.人と人とのつながりを育むまちづくり
地域活動の推進については、北栄町自治基本条例に基づき、開かれた町政を推進します。町報やホームページ、SNS等を活用し積極的な情報提供に努め、町民、事業者、コミュニティ、行政それぞれがお互いの理解と信頼関係のもと「自分ごと」として取り組むまちづくりを推進します。
自治会活動への支援として、集会施設の修繕補助や、対面での敬老会開催への支援を強化し、コロナ禍で希薄化した地域の絆を再構築します。
移住定住の促進については、町内の魅力的な風景や人を織り込んだガイドブックを新たに作成するなど、戦略的な「呼び込み」を展開します。若者の住宅取得支援を継続するほか、Uターンを希望する若者に対して、地方生活の必須アイテムである「乗用車購入」を新たに支援し、定住への一押しを行います。
二地域居住の推進については、特定居住促進区域である由良地区の空き家調査を強化し、利用可能な物件の掘り起こしを進め、なりわいづくりや住まいの確保を図る体制を整備します。
関係人口の活用では、地域力創造アドバイザーや地域活性化起業人の専門知見を町の課題解決に活かし、外からの視点を取り入れた「官民連携」のまちづくりを加速させます。また、アンバサダーとして、居住する都市部と北栄町の双方で町の魅力発信を行う人材の輪づくりを行っていきます。
6.健全な財政運営
持続可能なまちづくりのためには、強固な財政基盤が不可欠です。
将来負担の平準化を図りつつ、官民連携の推進や、ふるさと納税の返礼品開発強化による自主財源の確保に粘り強く取り組みます。
行政の効率化については、DX推進計画に基づき、住民票等の「コンビニ交付サービス」を導入します。またデジタル技術を活用して事務の省力化を図り、デジタルでは解決しない住民サービスに職員が注力できる体制を整えます。
また、国から新設された「地域未来交付金」を戦略的に活用し、今後3年間の集中投資期間において、「稼げる」「住みたくなる」「住み続けたくなる」まちづくりの取組を集中的に展開していきます。
【むすびに】
以上、令和8年度の町政運営に向けた所信の一端と主要な取組について御説明申し上げました。
町制施行から20年。町は成人としての責任を背負い、次の20年という新たなステージへと踏み出そうとしています。
人口減少という厳しい現実は確かに存在します。しかし、私は決して悲観していません。道の駅「ほうじょう」の賑わい、間もなく開通する山陰道、新しく生まれ変わる青山剛昌ふるさと館。そして何より、この町で暮らし、この町をより良くしようと情熱を傾ける、町民の皆様の存在です。
これまでの準備が、いよいよ「形」となり、町民の暮らしに「実り」をもたらす。その大きな変化の瞬間に、私たちは今、立ち会っています。
「礎(いしずえ)」から「結実(けつじつ)」へ。
私は、町民の皆様の声に寄り添い、議会の皆様と真摯に対話を重ね、この愛する北栄町のさらなる飛躍のために、不退転の決意で全身全霊を捧げてまいる所存です。
町民の皆様、ともに「確かな未来」を育み、喜びを分かち合い、一歩一歩着実に、そして力強く歩んでいきましょう。
町民の皆様並びに議員の皆様の、より一層の御理解と御協力を心よりお願い申し上げまして、私の令和8年度施政方針とします。



