ほくえい未来トーク2022実施報告(2022年10月29日開催)

 

 北栄町では2050年までに脱炭素を目指すことで、将来世代を地球温暖化による気候危機から守る持続可能な北栄町の未来を築くことを目的とした計画づくりに取り組んでいます。

 今回、2050年の北栄町の姿や脱炭素のためのアクションを具体的にするため、「ほくえい未来トーク」の第2回を開催しました。北栄町の将来設計や目標について専門家の解説をもとに町民の方々と一緒に考える場となりました。

【あいさつ】

 

 まずは、北栄町環境エネルギー課杉本課長より開会挨拶。 「色々な年代のたくさんの方に関わっていただいてほくえい未来トークを開催できました。 北栄町の現状を知り、このままだとどのようになってしまうのか、どのような取り組みが必要なのかなど、あらゆる北栄町の現状を一緒に学びながら考えていきましょう。」

進行は、前回に続き、中国地方環境パートナーシップオフィス事務局長の松原裕樹さんです。

【セッション1】

(1)グループ内での自己紹介

 

 参加者同士がグループに分かれ第1回からの宿題「第1回で学んだことを自分の身近な人に伝えて、意見や疑問を聞いてみる」の実践を共有しました。

【セッション2 わたしたちの脱炭素ロードマップ】

(1)ロードマップづくりの進捗共有

 

脱炭素ロードマップのビジョンや実施内容、町の課題などをECOフューチャーとっとりの山本氏と北栄町環境エネルギー課の山本室長の「ダブル山本」でトークをしながら説明しました。

北栄町の2050年のイメージをアニメ映画に例えて、

「ドラえもんの生まれたSF的な世界」でしょうか?

あるいは

「トトロのいる森がある村」のような世界でしょうか?

という問いかけから、

「風の谷のナウシカ」の風の谷のように、今までも北栄町は地域にある風という資源を上手に活かしてきたことから、 北栄町の脱炭素のまちづくりは風の谷のように、地域にある風を活かし、そして高齢者から子どもまで全ての人が活躍するにぎやかな笑顔にあふれた町というイメージを共有しながら進めたいとお話しました。

また、地域にある資源を活かしつつ、今漏れているエネルギーを通した経済損失の穴をふさぎ、省エネで快適な暮らしをしながら町を住みやすく発展させていくことが脱炭素の目的でもあるのではないかと、スライドを基に提案しました。

 

 

省エネ最大限、再エネ最大限

(2)ぺちゃくちゃタイム

脱炭素ロードマップに対する共感や疑問などをグループでシェアし全体で発表をしました。

ここでは、そこで出された内容を紹介します。

 

  • 脱炭素に対する不安を出してみることで、課題が見える
  • 民間でできることがたくさんありそうなので、企業など民間の力を活かす
  • 脱炭素に向けて取り組んだことによるメリットは色々あるが、世代によって刺さるメリットが異なる
  • 風のまちといわれる機会も多く、やはり北栄町は「風車の町」を前面に出したまちづくりが良いのではないか
  • ここで話されている内容はもっと住民へ認知してもらう必要がある
  • ガマンではなくて快適になることが分かった
  • 断熱性能のある家に住むと活動量が2倍になる。ただ、断熱性能を高めるには初期の費用がどうしても必要になるので、難しい場合は最も必要な場所から取り組むとよいのではないか

 

発表された内容について、一般社団法人クラブヴォーバン 代表 村上 敦氏より 北栄町の特徴をよくとらえていること、脱炭素ロードマップに盛り込む内容として取り入れる価値があるとコメントをいただきました。

特に、

  • エネルギーのことは町やその周辺で俯瞰した計画を立てるべきだけれど、住まい方を活かして個々の暮らしに合わせた脱炭素をしていくことは大変良い。
  • 北栄町のように、多世代で住んでいるのは省エネや移動などは良い意味で田舎らしい。北栄町らしく、大変効率的なこと。

とアドバイスがありました。

 

ファシリテーターの松原さんより、もし風力発電が無いと仮定する場合について質問をすると、村上さんは

2050年に脱炭素をするとすると、

  • 北栄町にある再生可能エネルギーは太陽光か地熱、木質バイオマス、小水力発電となること。
  • 地熱は北栄町の場合かなり温度が低く発電には向かないこと。
  • 木質バイオマスだと、結局は化石燃料と同じように他地域から購入する必要があり、経済的流出が起きること。
  • 小水力は、とても重要だが量は見込めないこと。
  • 太陽光発電で賄おうとすると、町内のいたるところに屋根上や野立てのパネルを設置することになること

などから、風力発電が無しではかなり厳しい条件となるとの回答がありました。ただし、風力だけではなく、太陽光発電などとバランスよく組み合わせることで柔軟性のある再エネによる脱炭素地域になることをお話しいただきました。改めて北栄町に風力発電施設のあることの優位性について振り返ることになりました。

【セッション3 わたしたちの脱炭素アクション】

(1)ミニレクチャー

 

村上さんより、再エネ・省エネ最大のための「住居」・「交通・まちづくり」の視点から住民はどのようなアクションの選択肢があるか、資料をもとに情報提供をしていただきました。

最初に、省エネについては、行動変容(心構え)に頼るのではなく、投資をしてインフラなどを変えていくことだと前提条件の提示がありました。

それでもあえて個人の脱炭素に向けての行動として、お金の預ける先を町の例えば脱炭素型の集合住宅のできるプロジェクトなどに投資し、地域に還元できるよう なところに変えることが重要と言及されました。

 

 

北栄町の脱炭素シナリオ
  • BAUとは、今のままで省エネも何も変わらないことを前提
  • 省エネ最大とは、今の再エネ導入量が変わらない(増えない減らない)状態で省エネを最大限推進する前提
  • 脱炭素とは再エネも省エネも北栄町のポテンシャルからみて最大限に導入する前提でシミュレーションを実施したデータ
住居

民生業務

750件程度のストックのうち、毎年2%強程度が廃止

新築で入れ替え(CO2排出量が半減、約2件/年)、省エネ改修・省エネ設備への入れ替え(CO2排出量が2/3に減少、約7件/年)することを前提としています。

民生家庭

5000戸程度のストックのうち、毎年3%強程度(約150戸/年)が廃止

新築で入れ替え(CO2排出量が半減、約60戸/年)、省エネ改修・省エネ設備への入れ替え(CO2排出量が2/3に減少、約60戸/年)することを前提としています。

交通まちづくり
  • 2019年~2050年まで通年して、旅客自動車の2019年のストック9,265台の5%(約470台)が毎年、燃費/電費性能のより高い形で更新が行われること
  • 2019年~2040年までは、
    旅客自動車の2019年のストック9,265台の5%(約470台)が毎年、燃費性能の高いEV(40%の熱費改善)を選択することで更新が行われること
  • 2041年~2050年までは、旅客自動車の2019年のストック9,265台の5%(約470台)が毎年、廃車になる、あるいは走行距離が短縮されること

(2)グループワーク

ここでは参加者で「住居」・「食と農」・「交通・まちづくり」の3つのテーマに分かれ、意見交換を行いました。

ロードマップに向けた課題データについてアクションするアイデアや他住民へのメッセージについて、意見交換でそれぞれのグループの皆さんから出てきた内容を紹介します。

住居
  • 各世帯の光熱費を見える化することでエネルギーの使用量を抑えることを促す
  • 太陽光の設置に関して全世帯の住居は設置可能なのか調査が必要
  • 家電を買い替えることによりどの程度消費電力を抑えることができるのかを示す
食と農
  • 地消地産の促進
  • 選果場と加工所の一体化でエネルギー効率を進める
  • スマート農業を広げ、誰でも農業に取り組みやすい体制を整える
  • 作物を育て、料理をして食べるようなイベントにより、一緒に体験できるような取り組みを実施する
交通・まちづくり
  • 鉄道やバスなどの公共交通機関で行動することを前提に町の設計を考える
  • 郊外に住むような人の声を聞きながら、同時にコンパクトな町を目指す
  • 車のEV化だけでなく乗り合いなど所有を共有へシフトさせる

【参加者の声】

今回のセミナー後にアンケートに答えていただきました。

「脱炭素ロードマップへどのようなことを盛り込みたいと思いましたか」という質問に対するご意見の中から一部紹介させていただきます。

  • 各家庭へのCO₂排出量の見える化を推進する
  • 住民への認知をしっかりしながらロードマップ作りをする必要がある
  • コミュニティを維持しながら、社会インフラを脱炭素していく

など

また感想として

  • 高校生としてできることは少ないですが、この会の内容を発信する力は一番あると思うので知ってもらうことを頑張りたいです。
  • 今まで、他の地域では、あまり町民の方との話し合いを行っていることを聞かないので、本当によい取り組みだと感じています。町のコンセプトを大切にしながら、町民同士のコンタクトを忘れずにがんばりましょう。

このような、理解の深まった意見をいただき、脱炭素ロードマップへ前向きなアイデアとして盛り込めそうです。

【まとめ】

 10月29日開催の「ほくえい未来トーク2022」を振り返らせていただきました。

 参加者の中には、脱炭素については賛同しても、自分の生活が変わることに不安を持つ意見もありました。脱炭素とは、すぐに変化するのではなく、2050年のまちの在り方を変えるために今から方向性を示す2050年の姿です。できない理由は、変えていく課題としてとらえていくことを提案したいと思います。どう変えたらよいのかどうやって変えていくのか、を今後皆さんに提示しながら、具体的な動きが生まれるように、町民だけでなく行政や企業、周辺地域みんなで進めていけることを期待しています。

11月24日(木)には地元の事業者に向けた「SDGs脱炭素経営実践研修会」を開催します!

 北栄町は今年度、「2050年脱炭素」を実現するため、地域課題の解決にもつながる脱炭素ロードマップを作成しています。脱炭素に向け、先手を打ちたい地元事業者のみなさんにぜひ参加していただきたいセミナーです。

多くのご参加をお待ちしております。